自筆証書遺言、公正証書遺言の有効性11(東京地裁 令和2年6月12日)

【事案の概要】

亡Gの相続人である原告らが、同じく亡Gの相続人である被告らに対し、平成24年11月24日付けの公正証書遺言による亡Gの遺言について、その遺言当時、G遺言能力を有していなかったこと等を理由として,当該遺言が無効であることの確認を求めた事案です。

【裁判所の判断】

裁判所は遺言無効確認請求を棄却した(東京地裁 令和2年6月12日)。

【争点】

1 Gが本件遺言時において,遺言能力を欠いており,本件遺言が無効か。

裁判所は以下のように判示し、Gが本件遺言時において,遺言能力を欠いていたものとは認められないとしました。

「前記認定事実(前記争いのない事実を含む。以下同じ。)によれば,Gは,平成24年5月8日の時点において,自らの身分及び財産に大きな影響を及ぼす養子縁組をするに十分な能力を有していたところ,本件公正証書遺言は,その約半年後に作成されたものであり,本件遺言当時以降も平成25年5月まで単身で自宅から離れた病院へ赴き新幹線で福島県を訪れて各種会合に参加し,弁護士事務所を訪れて弁護士と訴訟の対応の打ち合わせをするなどものである。」

「…また,3月7日に実施された介護認定に係る調査員による面接調査においても,Gについて,短期記憶に問題がある旨の指摘がされていたものの,意思を他者に伝達することについては可能であり,日常の意思決定も特別な場合を除いて可能であるとの評価がされていたものである。」

「また,同年2月22日に作成された主治医の意見書においては,Gが認知症に罹患しており,短期記憶に問題があり,日常の意思決定を行うための認知能力には見守りが必要であり,「認知症が今後の生活機能低下の原因と思われる。」旨の記載がされているものの,心身の状態としては,意思疎通の困難さが多少見られても,誰かが注意していれば自立できるとのという評価がされ,認知症の周辺症状においても特にないと評価されており,この主治医の意見をもって直ちにGが意思能力を欠く常況であったものと認めることはできない。」

「これらの事情に本件遺言時以降Gが死亡するまでの間,Gと日常生活上関わっている者において,Gの意思能力に問題を感じたとのという事実が特にうかがわれないことなどを併せみれば,Gが,本件遺言時において遺言をする意思を有していない常況であったものとは認めることはできない。」

【判決のポイント】

本判決においても,裁判所は遺言能力の判断に際して,客観的資料の他,遺言書の内容,遺言者の心身の状況,健康状態,遺言についての意向等を総合考慮するという従来からの判断方法に従って結論を導いたものと考えられます。

本件では,客観的資料として主治医の診断書等が用いられています。

また,Gが遺言をする前の行動及び遺言後の行動等を総合考慮し,遺言能力を判断したものと思われます。

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