遺留分請求をできる人・できない人

1.遺留分権利者

遺留分権利者について、民法は「兄弟姉妹以外の相続人」と規定しています(同法第1042条1項)。

このように法定相続人が全て遺留分権利者というわけではなく、兄弟姉妹以外の配偶者、子、直系尊属といった相続人のみが遺留分権利者に該当する点に注意が必要です。

また、胎児も生きて生まれれば「相続人」(被相続人の子)となりますので、遺留分権利者に該当します。

他方、相続欠格、廃除、相続放棄により「相続人」としての資格を失った者は遺留分権利者には該当しないことになります。

2.遺留分請求できる人 配偶者

被相続人の配偶者は常に相続人となりますので(民法第890条)、遺留分権利者に該当します。

遺留分権利者が配偶者のみの場合の遺産全体に対する遺留分率(総体的遺留分率)は2分の1となります。

例えば、相続人が妻のみの場合、妻の遺留分率は2分の1(※)となります。

※遺留分権利者が1人なので、総体的遺留分がそのまま個別的遺留分となります。

3.遺留分請求できる人 子

被相続人の子は第1順位の相続人となりますので(民法第887条1項)、遺留分権利者に該当します。

遺留分権利者が子のみまたは配偶者と子の場合の遺産全体に対する遺留分率(総体的遺留分率)は2分の1となります。

そして、遺留分権利者が複数いる場合には上記総体的遺留分率にそれぞれの相続分を乗じて各遺留分権利者の個別の遺留分率(個別的遺留分)を算出します。

具体的には以下の通り算出します。

(1)遺留分権利者が子1人のみの場合

子の個別的遺留分率は2分の1(※)となります。

※遺留分権利者が1人なので総体的遺留分がそのまま個別的遺留分となります。

(2)遺留分権利者が子2人の場合

子らの個別的遺留分は4分の1ずつ(※)となります。

※総体的遺留分2分の1×子らの法定相続分2分の1

(3)遺留分権利者が配偶者と子1人の場合

配偶者の個別的遺留分率は4分の1(※1)、子の個別的遺留分は4分の1(※2)となります。

※1 総体的遺留分2分の1×配偶者の法定相続分2分の1

※2 総体的遺留分2分の1×子らの法定相続分2分の1

(4)遺留分権利者が配偶者と子2人の場合の場合

配偶者の個別的遺留分率は4分の1(※1)、子らの個別的遺留分率は8分の1(※2)ずつとなります。

※1 総体的遺留分2分の1×配偶者の法定相続分2分の1

※2 総体的遺留分2分の1×子らの法定相続分4分の1

4.遺留分請求できる人 代襲相続人

被相続人の子が被相続人の相続開始前に死亡してしまった場合には、その者の子が相続人となります。これを代襲相続といいます(民法第887条2項)。

さらに、代襲相続人も相続開始前に死亡してしまった場合には、その代襲相続人の子が相続人となります。これを再代襲といいます(民法第887条3項)。

これらの代襲相続人も遺留分権利者に該当します。

遺留分権利者が子(代襲相続人を含む)のみまたは配偶者と子(代襲相続人を含む)の場合の遺産全体に対する遺留分率(総体的遺留分率)は2分の1となります。

そして、遺留分権利者が複数いる場合には上記総体的遺留分率にそれぞれの相続分を乗じて各遺留分権利者の個別の遺留分率(個別的遺留分)を算出します。

例えば、被相続人の子が2名(うち1名の子は被相続人の相続開始前に死亡しており、その者の子である代襲相続人が2名)のケースについて、被相続人の配偶者がいる場合といない場合における遺留分率は以下のとおりとなります。

(1)被相続人の配偶者がいない場合

子の個別的遺留分は4分の1(※1)、代襲相続人らの個別的遺留分は8分の1ずつ(※2)となります。

※1 総体的遺留分2分の1×子の法定相続分2分の1

※2 相対的遺留分2分の1×代襲相続人らの法定相続分4分の1ずつ

(2)被相続人の配偶者がいる場合

配偶者の個別的遺留分率は4分の1(※1)、子の個別的遺留分率は8分の1(※2)、代襲相続人らの個別的遺留分は16分の1ずつとなります。

※1 総体的遺留分2分の1×配偶者の法定相続分2分の1

※2 総体的遺留分2分の1×子の法定相続分4分の1

※3 総体的遺留分2分の1×代襲相続人らの法定相続分8分の1ずつ 

5.遺留分請求できる人 直系尊属

直系尊属は第2順位の相続人となりますので(民法第889条1項1号)、遺留分権利者に該当します。

遺留分権利者が直系尊属のみの場合の遺産全体に対する遺留分率(総体的遺留分率)は3分の1となります。

他方、遺留分権利者が配偶者と直系尊属の場合の遺産全体に対する遺留分率(総体的遺留分率)は2分の1となります。

そして、遺留分権利者が複数いる場合には上記総体的遺留分率にそれぞれの相続分を乗じて各遺留分権利者の個別の遺留分率(個別的遺留分)を算出します。

具体的には以下の通り算出します。

(1)遺留分権利者が直系尊属1人のみの場合

直系尊属の個別的遺留分率は3分の1(※)となります。

※遺留分権利者が1人なので総体的遺留分がそのまま個別的遺留分となります。

(2)遺留分権利者が直系尊属2人の場合

直系尊属らの個別的遺留分は6分の1ずつ(※)となります。

※総体的遺留分3分の1×直系尊属らの法定相続分2分の1

(3)遺留分権利者が配偶者と直系尊属1人の場合

配偶者の個別的遺留分率は6分の2(※1)、直系尊属の個別的遺留分は6分の1(※2)となります。

※1 総体的遺留分2分の1×配偶者の法定相続分3分の2

※2 総体的遺留分2分の1×直系尊属の法定相続分3分の1

(4)遺留分権利者が配偶者と直系尊属2人の場合の場合

配偶者の個別的遺留分率は6分の2(※1)、直系尊属らの個別的遺留分率は12分の1(※2)ずつとなります。

※1 総体的遺留分2分の1×配偶者の法定相続分3分の2

※2 総体的遺留分2分の1×直系尊属らの法定相続分6分の1

6.遺留分請求できない人 兄弟姉妹

兄弟姉妹は法定相続人ではありますが(民法第889条1項2号)、遺留分権利者ではありません(同法第1042条1項)。

そのため、法定相続人が兄弟姉妹のみというケースでは、遺留分侵害額請求の問題は発生しないことになります。

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