入居者が行方不明・夜逃げした場合の対応について

1.よくあるご相談について

入居者が行方不明・夜逃げした場合の対応について

賃料を滞納している賃借人が行方不明、夜逃げしてしまうというケースで、「もう戻ってこないのだから、室内に残置された家具や電化製品などを撤去してよいか」というご相談を受けることがあります。

しかし、賃料を滞納している賃借人であっても、無断で荷物を運び出したり、処分したりする行為は、自力救済に当たるものとして禁止されます(場合によっては、賃貸人や管理会社の損害賠償責任の問題に発展する危険もあります)。

そのため、賃料を滞納している賃借人が居住し続けているというケースだけでなく、行方不明・夜逃げしてしまったというケースについても、弁護士に依頼することにより適法に建物明渡しを実現することが必須といえます。

以下、賃借人が行方不明、夜逃げしてしまうというケース特有の問題について、ご説明します。

2.裁判における問題について

賃借人が行方不明、夜逃げしてしまったケースでも、建物明渡しを実現するためには、賃借人を被告とする建物明渡請求訴訟を提起する必要があります。

しかし、賃借人が行方不明等のケースでは、訴状が被告に送達できないという特有の問題が発生します。

この場合、被告に訴状が届かなければ裁判を開くことができないため、訴訟を提起した後に裁判所から「被告の所在を調査してください」という指示を受けることになります。

そこで、弁護士が被告の住民票の異動を確認するなどして現在の居所を調査し、その結果を報告書として裁判所に提出します。

この調査によっても被告の現在の居所が判明しない場合には、裁判所が公示送達(一定期間裁判所の掲示板に掲示するという送達方法)により訴状を被告に送達したものとして、ようやく裁判の期日が指定されることになります。

このように、賃借人が行方不明等のケースでは、被告の所在調査が必要となるため、通常の建物明渡請求訴訟よりも日数がかかるという問題点があります。

3.強制執行における問題について

強制執行では、いきなり荷物を搬出するのではなく、一度執行官が現地に行き、明渡期限を定めた上で任意に建物を明け渡すよう求める「催告」という手続を行います。

この「催告」手続では、明渡期限等を記載した公示書を建物内に掲示することになります(賃借人が不在であっても、開錠して建物内に公示書を掲示します。)。

建物内に公示書を掲示された賃借人としては、強瀬執行(断行)が迫っていることを知ることになりますので、この時点で任意に建物を退去することも多いといえます。

しかし、賃借人が行方不明、夜逃げをしてしまったケースでは、すでに賃借建物に居住していないため、賃借人が任意に建物を退去すること(自ら荷物を運び出すこと)が期待できません。

そのため、このようなケースで建物明渡しを実現するには、賃貸人が荷物の搬出・保管・処分にかかる費用を負担することが前提となってくるという問題点があるといえます。

4.応用編(賃借人が孤独死したケース)

似たようなケースとして、賃借人が孤独死をしてしまったというご相談を受けることがあります。

このようなケースでも、無断で荷物を運び出したり、処分したりする行為は、自力救済に当たるものとして禁止されます。

この場合、まず賃借人の相続人の有無を調べることからスタートします。

その後の対応については、以下の3パターンに分かれます。

(1)相続人がいるケース

すでに賃料の滞納が発生している場合には、相続人全員に対して、未払賃料の催告及び賃貸借契約の解除通知をします。

その後の流れは、通常の賃料滞納による建物明渡請求事件と同様になります(訴訟→強制執行という流れになります)。

(2)相続人はいるが全員相続放棄をしてしまったケース

この場合には、明渡請求をする相手方が存在しないため、裁判所に対して、賃借人の相続に関する相続財産管理人の選任を申し立てます。

そして、相続財産管理人に選任された弁護士に対し、建物明渡しを求めることになります。

(3)相続人がいないケース

(2)と同様の対応になります。

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