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1.法定相続人
自筆証書遺言や公正証書遺言等の遺言が存在しない場合、法定相続人全員による遺産分割協議をしなければ、遺産である預貯金の解約、不動産の名義移転などをすることができません。
この法定相続人は、民法第886条以下に規定されております。具体的には、以下のとおりです。
(1)配偶者
常に相続人になります。
(2)血族相続人
- 第一順位 子
- 第二順位 直系尊属
- 第三順位 兄弟姉妹
2.第一順位 配偶者
被相続人の配偶者は、常に相続人となります(民法第890条)。
例えば、夫が死亡した場合、妻は常に相続人となります。
この「配偶者」には、法律上の婚姻をしていない、いわゆる内縁配偶者が含まれないと考えられています。
そこで、内縁配偶者に遺産を承継させるために、内縁夫婦の一方が死亡した場合に離婚に伴う財産分与の規定(民法第768条)を類推適用できないかが争われた事例がありますが、裁判所はこれを否定しています(最高裁判所平12年3月10日判決)。
3.第一順位 子
被相続人の子は、第1順位の相続人となります(民法第887条1項)。
子と配偶者が相続人の場合、子の相続分と配偶者の相続分は、それぞれ2分の1となります(民法第900条1号)。
例えば、相続人が配偶者と子1人の場合には、相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1となります。
相続人が配偶者と子2人の場合には、相続分は配偶者が2分の1、子らがそれぞれ4分の1となります。
この「子」には、養子も含まれますので、被相続人の養子も全て相続人となります。
ただし、相続税の計算に当たり、基礎控除等の基準となる法定相続人に含められる養子の人数には制限がありますので注意が必要です。
4.第二順位 直系尊属
被相続人の直系尊属は、第二順位の相続人となります(民法第889条1項1号)。
直系尊属と配偶者が相続人の場合、直系尊属の相続分と配偶者の相続分は、親が3分の1、配偶者が3分の2となります(民法900条2号)。
例えば、相続人が配偶者と被相続人の父の場合には、相続分は配偶者が3分の2、父が3分の1になります。
相続人が配偶者と被相続人の父母の場合には、相続人は
配偶者が3分の2、父母がそれぞれ6分の1になります。
この直系尊属には、実の両親に加え、養親子関係にある両親も含まれることになります。
5.第三順位 兄弟姉妹
被相続人の兄弟姉妹は、第三順位の相続人となります(民法889条1項2号)。
兄弟姉妹と配偶者が相続人の場合、兄弟姉妹の相続分と配偶者の相続分は、兄弟姉妹が4分の1、配偶者が4分の3となります(民法第900条3号)。
例えば、相続人が配偶者と被相続人の兄の場合には、相続分は配偶者が4分の3、兄が4分の1になります。
相続人が配偶者と被相続人の兄、妹の場合には、相続人は配偶者が4分の3、兄、妹がそれぞれ8分の1になります。
6.代襲相続人(相続人が子の場合)
被相続人の子は、第一順位の相続人です。
その子が被相続人の相続開始前に死亡してしまった場合には、その者の子が相続人となります。これを代襲相続といいます(民法第887条2項)。
例えば、相続人が配偶者と子1人であり、その子にも子(被相続人の孫)が1人いるとします。
このケースで、被相続人より先に被相続人の子が死亡してしまった場合には、被相続人の孫が代襲相続人になります。
この場合の相続分は、配偶者が2分の1、代襲相続人である孫が2分の1となります。
さらに、代襲相続人も相続開始前に死亡してしまった場合には、その代襲相続人の子が相続人となります。これを再代襲といいます(民法第887条3項)。
例えば、上記のケースで被相続人より先に、被相続人の子のみならず被相続人の孫までも死亡してしまった場合には、孫の子が再代襲相続人になります。
7.代襲相続人(相続人が兄弟姉妹の場合)
被相続人の兄弟姉妹は、第三順位の相続人です。
兄弟姉妹が相続人となる場合、兄弟姉妹が被相続人の相続開始前に死亡してしまった場合には、その者の子が代襲相続人となります(民法第889条2項、第887条2項)。
例えば、相続人が配偶者と兄1人であり、その兄に子(被相続人の甥)が1人いるとします。このケースで、被相続人より先に兄が死亡してしまった場合には、被相続人の甥が代襲相続人になります。
この場合の相続分は、配偶者が4分の3、代襲相続人である甥が4分の1となります。
なお、兄弟姉妹が相続人の場合には、子が相続人となる場合のような再代襲の規定がありません。
そのため、上記のケースで被相続人より先に、兄のみならず甥までも死亡してしまった場合には、相続人は配偶者のみとなります。
8.代襲相続人(相続人が養子の場合)
被相続人の養子も「子」になりますので、第一順位の相続人です。
その養子が被相続人の相続開始前に死亡してしまった場合には、養子の子が代襲相続人になるのかが問題になります。
この点、被相続人と養子が養子縁組をする「前」に養子の子が存在していた場合には、その子は被相続人の代襲相続人に当たりません。
このケースでは、養子縁組によって被相続人と養子の子の間に法定血族関係が生じないためです。
他方、被相続人と養子が養子縁組をした「後」に養子の子が出生した場合には、その子は被相続人の代襲相続人に当たります。
このケースでは、養子縁組により被相続人と養子には法定血族関係が生じておりますので、その後に出生した養子の子と被相続人との間にも法定血族関係が生じることになります。
9.父母の片方のみが同じ兄弟(半血兄弟姉妹)
被相続人の兄弟姉妹は、第三順位の相続人です。
被相続人の兄弟姉妹には、被相続人と父母を同じくする全血兄弟姉妹と父母の一方のみを同じくする半血兄弟姉妹があります。
そして、半血兄弟姉妹の相続分は、全血兄弟姉妹の2分の1になります(民法第990条4号ただし書)。
例えば、相続人が配偶者、被相続人の兄(全血兄弟姉妹)と弟(半血兄弟姉妹)がいるとします。
この場合の相続分は、配偶者が4分の3、兄が12分の2、弟が12分の1となります。
10.被相続人が死亡した後に相続人が死亡した場合
被相続人が死亡する「前」に相続人が死亡した場合には、代襲相続という制度が存在します(民法第887条2項、3項、第889条2項)。
それでは、被相続人の相続開始「後」に相続人が死亡した場合、被相続人の遺産分割協議には誰が参加すべきなのでしょうか。
例えば、相続人が配偶者と子1人であり、その子にも子(被相続人の孫)が1人いるとします。
このケースで被相続人の死亡後に子が死亡してしまった場合には、被相続人が死亡した時点で子が相続し、その後子が死亡した時点でさらに孫が相続することになりますので、被相続人の遺産分割協議は配偶者と孫で行うことになります(これを数次相続といいます。)。
他方、その後に死亡した被相続人の子名義の遺産に関する分割協議は、同人の相続人らにおいて別個に行われることになります。