遺留分の請求を弁護士に依頼するメリット

1.紛争化する傾向が強いこと

遺留分権利者による遺留分侵害額請求権の行使が問題となる場合、その前提として被相続人の意思による生前贈与や遺贈が存在することになります。

そのため、受贈者や受遺者としては「被相続人の生前の意思をできる限り尊重したい」という思いが強いものといえます。

これに対して、遺留分侵害額請求権の行使は、相続人保護の見地から被相続人の生前贈与等の自由な処分を制限する制度になりますので、遺留分権利者と受贈者・受遺者の意見が衝突し、紛争化しやすい傾向にあります。

そのため、当事者間の話し合いによる解決が困難な場合も多く、当初から遺留分侵害額請求権の行使を弁護士に依頼するメリットも大きいものといえます。

2.受贈者らの対応が消極的であること

遺産分割協議は「これから相続財産をどのように分けるか」というものであり、未だ相続財産の移転がなされていない段階での協議になります。

そのため、遺産分割協議の当事者が積極的に協議に参加することを期待することができます。

これに対し、遺留分が問題となる事案では、すでに被相続人による生前贈与や遺贈による相続財産の移転が完了しているケースが多く、請求を受ける側の当事者である受贈者、受遺者が協議に消極的なケースも多く見受けられます。

そのため、交渉をスムーズに進めていくという観点からも、遺留分侵害額請求権の行使を弁護士に相談するメリットは少なくないものといえます。

3.話し合いがつかない場合には裁判を申し立てる必要があること

当事者間の話し合いがつかない場合、遺産分割であれば、次のステップとして遺産分割調停を申し立てることになります。

そして、遺産分割調停でも合意が成立する見込みがない場合には調停不成立となり、自動的に家事審判手続に移行することになります(家事事件手続法第272条4項)。

他方、遺留分侵害額請求の場合にも、当事者間の話し合いがつかなければ、次のステップとして遺留分侵害額の請求調停を申し立てることになります。

しかし、遺産分割と異なり、合意が成立する見込みがなく調停不成立となった場合には家事調停手続が終了することになります(自動的に家事審判手続に移行するものではありません。)。

そうすると、遺留分権利者としては改めて遺留分侵害額を請求する裁判を申し立てる必要があります。

この裁判においては、交渉や調停等で主張してきた内容が裁判の勝敗を左右することもあり得ますので、予め主張する内容を弁護士と相談をしておくことが重要といえます。

4.消滅時効の危険が大きいこと

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅するとされています(民法第1048条1項)。

このように、遺留分減殺請求権は「1年間」という短期間で消滅時効にかかる権利です。

そして、遺留分侵害額請求権の行使方法に関しても、遺産分割協議の申入れをしたり、遺産分割調停の申立てをしたりするだけでは足りず、遺留分侵害を理由とする権利主張の意思表示を明確にしなければなりません。

また、仮に遺留分侵害額請求権の行使を明確にしたとしても、その証拠を保全しなければ、後にその行使の事実自体を争われる可能性もあります。

遺留分という大事な権利をしっかり保全する意味でも、遺留分侵害額請求権の行使を弁護士に任せるメリットがあるといえます。

5.生前贈与等の調査が必要なこと

生前贈与など被相続人による生前の財産の処分行為については、遺留分権利者が事情を知らないことも多いといえます。

そのため、遺留分侵害額請求権の行使に当たっては、被相続人による財産の処分行為の調査が必要になってきます。

例えば、被相続人名義の預貯金の場合、金融機関から相続開始時点の残高だけではなく、生前の取引履歴も併せ取り寄せます。

そして、過去の出入金の履歴から被相続人による多額の送金の有無などを調査して、他の相続人への生前贈与等の有無などを調べます。

その他にも、被相続人による生前の処分行為には様々な態様のものが考えられます(生命保険契約の契約名義人の変更など)。

遺留分を正確に算出するためには、被相続人の生前の財産処分についての正確な調査が必要になりますので、経験のある弁護士にこれらを任せることにはメリットが大きいものと考えます。

6.遺言や生前贈与等の効力を争う

遺留分が問題となる事案では、同時に生前贈与や遺言の有効性自体が問題になるケースも少なくありません。

そのような場合、まず生前贈与等の有効性を争うのか、それとも当該生前贈与による遺留分侵害を主張するのかという判断に迷うことも多いといえます。

どのような方針を取るかについては被相続人の生前の状況や遺産の内容等によりケースバイケースといえますので、遺留分を含む相続事件全般についての経験を有する弁護士に依頼をすることで適切に手続を進めることができると思います。

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